ホーム > 市民レポーターの目 > “たまり場”から世代を超えた交流を〜世代間交流・下宿プロジェクト たまり場の会〜
<地域の絆、深めるために>

 ひとりぼっちで暮らすおじいちゃん、おばあちゃんが安心して生活でき、近所の子どもたちと触れ合うことができる、そんな理想の住まいがあったら――。
「世代間交流・下宿プロジェクト たまり場の会」は、柏市に住む一人暮らしの高齢者に向けて、共有住宅(シェアハウス)を提供するとともに、地域の子どもたちとの世代間交流などを通じて、地域社会の絆を深めることを目的にしています。


<ソーシャルビジネスへの思い>
 代表の中村浩章さん(58歳)は、「いつかはボランティア、それも『ソーシャルビジネス』にかかわりたかった」とボランティアへの思いを話します。ソーシャルビジネスとは、環境・地域活性化・少子高齢化などの社会的課題について継続的に取り組む事業のこと。「事業目的を果たしながら、活動が続けられるだけの収入を上げられたら」と、お金を貰うことで責任感を強く持つソーシャルビジネスの考え方に共感すると言います。


<「たまり場の会」名の由来>

 そのような思いの中、平成22年秋、柏市が主催するソーシャルビジネスがテーマの公開講座に参加。そこで同じグループになった参加者7人で同年11月に会を立ち上げました。中村さんは「講座のワークショップで模造紙 に書く役目をしていたら、いつの間にか代表になってしまった」と笑います。会員でもある妻の和代さんからは、「最初は大丈夫かなと不安に思ったけど、チャレンジ精神旺盛だから」とお墨付きをもらいました。

 当初は、住民が気軽に立ち寄り交流できるコミュニティカフェをやろうとした中村さん。「『コミュニティカフェ』のような横文字は、お年寄りにはなじみません。近所で井戸端会議的なことができる、自宅以外の居場所としての“たまり場”という意味で名付けました」と会の名前の由来を明かします。


<『無縁社会』に危機感>

 しかし、会員からコミュニティカフェの運営には支持を得ましたが、収支の見通しから「採算は厳しい」と断念せざるを得ませんでした。
 そこで中村さんは、以前テレビ番組で取り上げられていた『無縁社会』を思い出します。定年を迎えた団塊世代が、社会や地域から孤立する現状に危機感を覚え、「行政の力だけでは限界があり、高齢者同士が支え合う仕組み作り、特に独居高齢者対策が急務だと感じました」。

 実際に22年の国勢調査を見ると、市内の総世帯数に占める独居高齢者世帯数の割合は6.1%。およそ16世帯に1世帯が一人暮らしの高齢者ということになります。さらに、5年前の同調査に比べて0.7ポイント上昇しており、今後もこの割合は増加傾向にあります。

 このような社会背景もあり、23年2月ごろに新たな事業目的として、一人暮らしの高齢者の孤立を防ぐ住まいの確保への支援を掲げました。そして、同年4月に柏市民公益活動補助金に申請したのです。


<公開講座を2回開催>

 実質的な活動の1年目となる23年度は、学習会や公開講座、“たまり場”にふさわしい物件探しを中心に行いました。

 学習会では、他のボランティア団体や知り合いの不動産業者を講師に、市内の「高齢者世帯の現状」「高齢者の賃貸住宅環境」などテーマを決めて実施。千葉市の保育施設を見学し、幼児と高齢者の交流について保育士と意見を交わすこともありました。

 24年3月には、教育福祉会館で公開講座を2回開催。18日に開催される講座では、「高齢者と子どものつながりが社会を変える」と題して、NPO法人「孫育て・ニッポン」の棒田明子理事長を講師に招き、世代間交流の必要性について話し合われる予定です。



<求む!理想の“たまり場”>

 次に物件探しですが、そもそも“たまり場”に適した家とは何でしょうか。会が探している物件のイメージは、左の表の通りです。

 具体的には、一戸建ての住宅を複数世帯で暮らすため、2階を高齢者の居住スペースに使用。1階は“たまり場”として近隣住民が気軽に利用できるように開放し、高齢者と子どもの交流会や地域行事、講座を実施します。



 ただ、この条件にかなう物件を探すのは苦労の連続でした。「夏の暑い時期に、手賀沼周辺を自転車で回りながら探したことも」と中村さんが振り返るように、まずは外観から条件に合う物件を探しますが、これがなかなか見つけられません。良さそうな物件があっても、人が住んでいるのか、空き家なのかどうかが分からないことも多かったといいます。しかも、たいていの大家さんは赤の他人が複数人も住むことに抵抗感を示し、活動の趣旨を理解してもらえなかったそうです。


 自分の足で探すのと並行して、補助金を活用して空き家募集のチラシを1千枚作り、ボランティアで築いた人脈を生かした物件探しも行いました。すると23年12月、別のボランティア仲間の手伝いをしていた中村さんは、「親が亡くなり空いている家がある。交流スペースとしてなら貸しても構わない」という女性に偶然出会いました。

 さっそく翌日、市内北部にあるその家を見に行くと、そこには約100坪の敷地に築30〜40年の一戸建てが。1階は6畳間が3つにキッチン、風呂、トイレがあり、2階は6畳間が2つ。賃料も格安で協力いただけるとのことでした。会では今後も継続して交渉し、「世代間交流の活動拠点として賃貸契約に結び付けたい」と考えているそうです。


<地道な活動が新たな一歩に>

 23年度当初の目標に「シェアハウスの1か所オープン」を掲げていましたが、「見通しが甘かった」と中村さんは振り返ります。ただ、「最初は思うように活動できませんでしたが、徐々にボランティアを通じて多くの人たちとつながることができ、自分が動いた分だけ情報収集ができるようになりました」と目を輝かせます。

 そして、机上だけでは分からなかった、自分の足で動いたからこそ見えてきた課題も。「来年度以降は、まずシェアハウスとなりそうな場所を見つけ、それから入居者を募集したいと思います。入居者には会の事務などを手伝ってもらい、会に積極的に参加してもらえれば。会員の中に介護福祉士や保育士が必要だとも感じました。入居者も10年20年経てばさらに高齢化します。会としてどこまで支援できるのか考えたいです」。

「たまり場の会」が取り組んでいる社会的課題はとても大きく、短期間で解決できるようなものではありません。ただ、会の地道な活動が、地域の独居高齢者対策への新たな一歩になるのではないでしょうか。
 皆さんのお住まいの近くには、理想の“たまり場”はありませんか?
(平成24年1月 市民活動レポーター 芦澤 慎二)


●世代間交流・下宿プロジェクト たまり場の会
 代表者:中村 浩章
 連絡先:04-7133-7433
 ホームページ:http://kashiwanpo.genki365.net/gnkk07/mypage/mypage_group_info.php?gid=G0000346
 
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