ホーム > 市民レポーターの目 > 「いっしょに、学習しませんか」―“学ぶ心”に応えたい〜柏自主夜間中学〜
 初めて柏自主夜間中学の学びの現場にお邪魔したとき、教室になっている中央公民館4階の部屋で、私はただ黙って、立ったままそっと、その光景を眺めていました。

 大きめのテーブルに複数の椅子、の組み合わせが4つ。先生と生徒さんが向かいあって、あるいは隣り合って、熱心にそれぞれの教材に向かい、また話し合って、ノートに書き込んでいます。ここでは、大教室で行われるグループでの講義形式ではなく、マンツーマンかそれに近い個別学習が行われているのです。

 柏自主夜中は、毎週木曜日の午後6時から8時45分まで、柏中央公民館4階の創作室と教育福祉会館2階の和室(同じ建物の4階と2階)で開講されています。希望者はいつでも入学できるし、修業年数はなく、年齢・国籍も問いません。授業料もいりません。ただし、「公立」夜間中学ではなく、「自主」夜間中学ですので、中学校卒業の資格は取れません。


<「学び」は、喜び ―自主夜中の教室にて―>

 静かに教室で学び・教えている人たちを見ていると、向かい合っているふたりのどちらが先生でどちらが生徒なのか、わからないことに気がつきます。年齢も性別も超えた学びの場がそこにあったのです。若い男性に、髪の白いご婦人が、「先生」と呼びかけているし、高校生くらいの男の子と雑談している風の壮年の男性もいる。

 柏自主夜中では、戦争や家の事情で学ぶことが出来なかった方、不登校や障害のある方、外国籍の方で日本語を学びたい方や、小中学校の内容を学び直したい方など、様々なニーズをもった中学生から70代の方まで、数十人が学んでいるそうです。ちなみに、先生役のスタッフも生徒さんと同じくらいの人数です。

 勇気を出してひとつのテーブルに近寄り、学習の様子をそっと伺うと、どうやら算数の勉強をしています。その様子を見ているうちに、徐々に静かな感動に似た気持ちが湧き上がってきたことに驚きました。

 ひとつのノートに頭を寄せ合い、何かを一生懸命に話し合っている先生と生徒。しかし、生徒さんはいまひとつ飲み込めない様子。すると、今度は、別の方法で説明を始める先生。おそらくは、「その内容がわからないなら、更にその一段手前の基礎に戻ろう」というようにあくまで生徒さんに合わせ、理解を深めて行く様子なのです。

 一歩進んで、二歩戻る、とでもいうように、その学習は、あくまでも生徒さんが主体で進んで行きます。そこに、互いを急がせたり、責めたりする様子はなく、学ぶことと、教えることの純粋な喜びが、あるように見えました。


<自主夜間中学とは?>

 代表の榎本博次さんにお話を聞きました。
「日本の義務教育就学率が高いことは確かですが、それでも、実際には様々な理由で小・中学校の義務教育を受けられず、そのまま未修了である人たちが存在します。これらの人たちは、文字が読めなかったり、簡単な計算ができないため、役所や病院の窓口や駅などで、悲しく、屈辱的な思いをしてきています」。

 これらの義務教育未修了の人たちの学びの場として公立中学校・夜間学級(夜間中学校)が全国に35校あります。

 榎本さんたちは、松戸市内に公立の夜間中学校の開設を求める運動を30年も続けて来られました。更に、行政がやらないのであれば、市民の教育への権利を市民の手で保障していこうと、市民の自主運営による学びの場、松戸自主夜間中学校を開講しました。その積み重ねの中で、柏市でも自主夜間中学を、という機運が高まり、2009年4月、柏市にも自主夜間中学が誕生しました。自主夜中は全国に約20校あるそうです。



 2011年、柏自主夜中は開講3年目に入り、毎週の学習日に欠かすことなく続けることはもちろん、生徒さんと先生たちとの交流会『話しましょう会』(9月)、第1回校外学習で布施弁天周辺散策(11月)、公開講座『震災の福島に自主夜間中学開講』(12月)などのイベントを開催してきました。

 他にも、生徒さんも加わってのパンフレット作成班が話し合いを重ねて、広く柏自主夜中を知って頂くためのパンフレットを作成・配布するなど、地道に活動の幅を広げつつあり、公立ではなく、自主夜中であるからこそとも言える柔軟な活動を模索しつつあります。


<今後の課題は?>

 それでも、柏自主夜中はまだ始まったばかり。課題はたくさんあります。まずはもっと柏自主夜中の存在を多くの方に知って頂き、必要な人のもとに情報を届けること。「そのために、今年作ったパンフレットを有効に活用したい」と榎本さんは力を込めました。次に、今後を考えて、運営の基盤をどうするか、ずっと規模が大きい松戸の自主夜中では、運営資金の問題も避けては通れず、運営に生徒さんも加わって頂く形で随分と議論を重ねて、今では授業料ではなく、運営費としておひとり年会費1,500円を集めているそうです(イベントに参加して、たこ焼きを売って運営費にしたりも!)。

 また、11年度は柏市から得た補助金が、上記パンフレットの製作費や、公開講座などのイベント開催費、教材費などとして、随分役立ったとも聞きました。このような形で、私たちの税金が生きているなら、嬉しいことですね。

 それにしても、榎本さんを始め、無償で自主夜中を支えていらっしゃるスタッフの方々を知るにつれ、どうしてこんなに一生懸命にできるのだろう、と不思議になりました。その答えは人それぞれかもしれませんが、ここには本当のところ先生も生徒もなく、知っていることを知りたい人に伝える、知らないことを知っている人から教えてもらう、その学ぶことの楽しさ、自由さ。それがあるから、なのかもしれないですね。
(平成23年11月 市民活動レポーター 所 英明)


●柏自主夜間中学
 代表者:榎本 博次
 連絡先:090-9247-3691(越山方)
 ホームページ:http://members3.jcom.home.ne.jp/kshw-jishuyachu/
 
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