ホーム > 市民レポーターの目 > 街を生かすアートから、アートが生きる街へ〜JOBANアートラインかしわ実行委員会〜
<街を翔けるアート>

 心地よい秋風が吹き始めた10月半ば、柏駅周辺の地面15カ所に、耳と足を型取った白いマークが現れたのをご存知ですか? 雑踏の中、その足型に自分の足を乗せて顔をあげると、いつも何気なく通り過ぎる柏の街が、少し違う色に見えてきます。これは、「アートライン月間」で開催されたイベントの1つ、点音(おとだて)というプログラム。独創的なサウンドアーティスト、鈴木昭男さんによる、肌で街を感じる異色のアート体験です。

 2011年で6回目を迎えた「アートライン月間」は、アートを通した街づくりを目指す「アートラインかしわ」によって、10月15日から11月13日まで開催されました。1カ月間、市内でワークショップ、展示会、パフォーマンスなどが繰り広げられ、多くの参加者を集めました。


 こうしたイベントは、アーティストの選定、会場の交渉から広報まで、すべてボランティアスタッフによって進められます。駅前の商店街や市内で事業を営む方、学生、大学の先生と、メンバーの職業も、関わり方もさまざま。その1人でもあり、柏市内でギャラリー「island」代表を務める伊藤悠さんは言います。「住んでいる人、街のためのアート、というコンセプトに共感しました。柏の街中がキャンバスになったらいいなと思います」。
 
 しかしボランティアのやる気だけでは成功しません。柏市内はもちろん、市外からも参加者が駆けつけ、柏駅周辺が盛り上がるこのイベントは基本的にすべて無料。柏市からの補助金が、アーティストの材料費や広報費用の一部を支えました。


<誇れる街をつくる>

 そんなアートライン月間をはじめ、さまざまな交渉、企画を中心になって進めるのは、アートラインかしわ実行委員長の寺嶋郁夫さん。子どもの頃からどっぷりと柏につかって過ごしてきたのかと思いきや「若いときは、柏から出て行くことしか頭になかった」と笑います。

「でも、県外で仕事をしたら、柏って意外と悪くないと気づいたんです。若い人たちが『ウラカシ(裏柏)』と呼ぶ個性的なお店が増えたのも嬉しいですね。これからはベッドタウンも生き残りの時代。街を守っていかないといけない、誇れる街をつくりたい という気持ちは、この活動を始める前から少しずつ膨らんでいました」。

 アートラインかしわの一貫したテーマはアートですが、その原動力はあくまでも柏を魅力ある、元気な街にしたいという思いなのです。

 とはいえ、街づくりの方法はアート以外にもたくさんあるはずです。寺嶋さんがその疑問に答えてくれました。「あるアーティストが描いてくれた柏の街を見たら、とても電線が強調されていました。毎日、街を見ている自分は気づかなかった。アートを通すと、街を見る“目”が変わるんです」。

 街づくりの取り組みは数多くありますが、具体的な目標は定めにくく、ときとして進むべき方向を見失うことも。だからこそ、研ぎ澄まされたアートの感覚が、日常の中で気づかない柏の独自性と魅力を引き出してくれるのかもしれません。


<柏に根ざし、柏を越える>

 着実にネットワークが広がり、認知度も高まっているアートラインかしわ。しかし、イベント開催がゴールではありません。「団体の節目は5年ごとにやってくる」とは、柏駅前の変遷を見守りつづけ、アートラインかしわを設立からまとめあげてきた石戸新一郎代表の言葉です。

 6年目の今年は、JR常磐線とつくばエクスプレス沿線地域の団体が連携したアートによる活性プロジェクト「ART ROUND EAST(ARE:アール)」が本格始動。アートラインかしわも、街づくりの視点からアート活動を支える団体として、松戸や取手、北千住などの団体とともに参加しています。

 アートライン月間が、柏市民に街の魅力と誇りを気づかせてくれるものだとしたら、このARE(アール)をはじめとする市外、県外との連携は、魅力的な柏のイメージを柏の外へ発信してくれる活動なのかもしれません。


<きもちのいろ、こころのかたち>

 東日本大震災という未曾有の体験を通し、故郷とは何か、人とのつながりとは何かを深く考えさせられた2011年。アートライン月間のテーマも、見えそうで見えない、でも確実にそこにある「きもちのいろ、こころのかたち」でした。日々何気なく過ごす柏の街とそこに生きる自分を、少し違う視点から見つめなおす機会をくれたアートラインかしわの活動に出会い、素敵な街に住みたいなら、住んでいる街を素敵なところにすればいい、そんな気持ちが沸いてきました。

 実行委員長の寺嶋さんは「みなさん、一緒にやりましょう」と活動への参加を呼びかけます。アーティストとして、イベントの参加者として、あるいは自分の職業を生かして、この活動に関わる人が増える。それは「実は、柏好きなんだよね」というこころのかたちを発見する人が、増えていくことになるのかもしれません。
(平成23年12月 市民活動レポーター 今井 かおり)


●JOBANアートラインかしわ実行委員会
 代表者:石戸 新一郎
 連絡先:04-7167-4455
 ホームページ:http://kashiwa-art.com/
 
前の画面へ戻る
▲ページトップ